遅れてやってきた真理

認識というものはしばしば途方もなく遅れて訪れる。

きっかけとなった出来事や、会話、あるいは光景などから、何日、何年ーーー場合によっては何十年もたってから、ようやく人の心に訪れる。人には、知らないうちに植えつけられた思いこみというものがあり、それが〈真理〉を見るのを拒むからである。

人は思いこみによって考えるのを停止する。

たとえ〈真理〉を垣間見る機会を与えられても、思い込みによって見えない。しかもなかなかその思いこみを捨てられない。

〈真理〉というものは時が熟し、その思いこみをようやく捨てることができたとき、はじめてその姿ーーー〈真理〉のみがもちうる、単純で、無理も矛盾もない、美しくもあれば冷酷でもある、その姿を現すのである。

そして、そのとき人は、自分がほんとうは常にその〈真理〉を知っていたことさえも知るのである。


水村美苗著『日本語が亡びるとき』より

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